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東京高等裁判所 昭和38年(ネ)671号 判決 1964年5月11日

控訴人 恒生株式会社

被控訴人 光商事有限会社

主文

本件控訴を棄却する。

訴訟費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人は「原判決中本訴に関する部分を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用中原審本訴費用及び当審費用は被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張及び証拠関係<省略>は、原判決の事実摘示(ただし反訴に関する部分を除く)と同一であるから、これを引用する。

理由

被控訴人の第一次請求は原審で棄却され、これに対し控訴がないので、当審では予備的請求についてのみ判断することになる。

控訴人は、本件区分前の建物は、国鉄の高架線下にあり屋根もなく、橋脚を利用し、隣りとの仕切りも板張りその他類似の方法でなされている程度のもので、不動産とは認められないと主張する。

しかしながら、土地の工作物は、他から独立しそれ自体で一つの建物として完備しておらず、他の工作物の構造を共用することにより建物としての形態を備える場合でも、取引及び利用の目的となり、社会観念上独立した建物としての効用を有すると認められるときは、法律上一個の建物として所有権の目的となり得ると解すべきである(大審院昭和一二年五月四日判決参照)。本件建物は原判決認定のとおり、国鉄駅ホームを天井にし、鉄道高架線の橋脚を多く側壁に利用し、床も土間であるが、板張りで仕切りをし、出入口、窓をとりつけ、一部を階上階下に分つて階段を設け、控訴人がこれを印刷工場に使用しているのであるから、前記の観点からみて、独立した建物としての効用を有し、法律上一個の不動産といゝ得ることは明白である。

以上のほか、当裁判所の判断は、原判決の理由と同一であるからこれを引用することとし、乙第四七第四八号証第四九号証の一、二第五〇号証及び当審証人新井辰次郎、同一乗道明の各証言も右認定の妨げとならない。

それゆえ、被控訴人の予備的請求は正当として認容すべきであり、これと同趣旨の原判決は相当である。よつて、本件控訴は理由がないので棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九五条第八九条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 脇屋寿夫 渡辺一雄 太田夏生)

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